SS「長門有希の復讐」
リアルで精神的にまいりながらも頑張って更新です。本当に倒れるんじゃないかな……。
今日もレスからですね。
>ハルヒかわいい、最高!パソコンの前で悶えてました~
悶え死んでも責任は取れませんヨ(゚∀。)
>甘ーい!!なのに不思議と自然に読めてしまいました。
そう言ってもらえれば幸いです。僕も書きながらニヤニヤしていました。変態ですね、僕は。
たくさんのレスをいつもいつもありがとうございます。励みになるというか
もう命の糧です。今回の拍手からするに、みなさんハルヒが好きなんですね~。
僕ももちろん嫌いじゃありませんし、嫌いだったら書きませんもの。
みくるちゃん?古泉?ナンノコトデスカ?
そして、もう一ついただいたレスなんですが
>今度は、キョンが長門にやきもちをやくターンだと思います。
目からうろこでしたね。よくよく考えればパターン化されていたというか、僕の中で
二人の関係が型にハマりすぎていたことに気づかされました。
付き合っていれば、キョンが長門さんにやきもちやくことも自然ですよね。
まして長門さんですし。長門さんかわいいよ長門さん。
というわけで以下本文です。どうぞ。
長門有希の復讐
「今日は予定があるから無理」
「またかよ……」
SOS団の活動が無い日は長門と二人で帰るのが自然になっていたのだが、ここ最近の
長門はどうもおかしい。
予定がある、忙しいetc……
何かしらの理由をつけて断られている俺。
避けられているのかと考えたこともなくはないが、普段からそういうそぶりを見せるでもなく、
休日には普通にデートもする。
そこから考えると別に嫌われてるわけではないよな、というかそうであってほしい。
となると本当に理由があってのことなのか。
「心配はいらない」
俺の心を読んだかのようなタイミングで長門が言う。
でもな、ちゃんと理由も説明してくれないと納得できないってのもわかってくれ。
「最近のお前、そればっかじゃないか」
少しだけ口調に苛立ちを含めて言ったつもりだが、
「偶然」
長門は、ただそれだけしか答えをよこさなかったわけで。
「偶然って……お前、俺の気持ちも──」
キーンコーンカーンコーン……
チャイムが鳴り響き、次の授業の開始を予告する。
それを聞くなり長門は踵を返し、教室へと歩き出した。
「おい!」
呼びかける俺の声に、
「信じて」
ただ一言だけを残して。
俺だって長門のことを疑ったりなんかしたくないさ。
ただ、よからぬ噂を聞いちまったんだよ
お前が男と会っているって噂をな。
外面だけ見れば谷口的美少女ランクAマイナー、簡単に言えば普通に美少女だ。
もちろん俺もそう思う。
別に自慢じゃないぞ。
そこんとこ誤解するなよ。
そして俺が今なにをしているかというとだな。
「…………」
すぐに身を隠せるように道の端っこを歩き、警戒しながら前を行く小さな背中を
追いかけている。
昼休みに長門と別れたあと、悩んだ末の結果がこれだ。
放課後予定があるという長門のあとを尾行なんてしているわけで、ほんと何やってるん
だろうね、俺は。
ときたま長門は立ち止まり、キョロキョロ周囲を見回したりしているが、これは長門も何かを
気にしていることの表れじゃないだろうか。
これは気になる。
ただ、長門が立ち止まるたびに電柱の陰に隠れたりするせいで周りの人たちの視線が
少々痛いがこの際構っていられない。
しかし、以外なことに長門には気付かれていないようだった。
俺って探偵の才能でもあるのかね。
将来の選択肢候補に加えておこう
恥ずかしさを押し殺しながら、長門を見失わないようにこっそりと追いかけること数十分。
「お?」
長門は、街でも大手であるゲーセンへと入っていった。
「予定があるって、ゲーセンかよ……」
どういうことだ。
足が自然と入り口へと向かったが、なんとか踏みとどまる。
さすがにこの格好だと目立ちすぎるし、中までついていってしまってはすぐバレてしまうだろう。
「くそっ……」
仕方ない。
ここから様子を眺めるしかないか。
ガラス張りの壁面からさりげない風を装って中の長門の姿を追う。
幸い店の奥深くに進むことはなく、入り口に近い長門お得意のガンシューティングゲームへと
向かったようだ。
「本当に遊びにきただけなのか?でも、それなら俺が一緒に来たっていいだろうに……」
長門は筐体の前に立って鞄を置き、硬貨をコイン投入口に飲み込ませて銃を構える。
おかしいところは、今のところ特に無い。
しかし、やはりこのまま何も無いということは逆におかしい。
すなわちそれは、単純に俺と一緒にゲーセンに行きたくないと解釈できてしまうわけで、
男でも何でも、何かしら理由があってのことでないと俺がみじめでしかない。。
落ち着かない心境で長門の様子を観察していると、
「ん?」
見た目二十歳前後くらいの、今時の若者って感じの茶髪男が長門に声をかけた。
何を話しているかはわからないが、どうやら二人は顔見知りみたいだが、件の男は明らかに
不良街道驀進中なご様子だ。
聞いた噂が頭をよぎる。
「おいおい……」
予定ってのは、まさかこの男と会うことだってのか?
少しずつ俺の体が熱を持っていくのを感じた。
体は感情に正直だってのに、頭のほうはやけに冷静なもんなんだな。
もう少しだけ、もう少しだけ様子を見ようと思っていたんだが、茶髪男が親しげに長門の肩に
手を置いたのを視界に捉えた瞬間、
「長門から手を離せ!」
気付けば俺は茶髪男に指を突きつけていた。
訝しげな表情で俺を睨みながら、
「あ?なんだ、テメー?」
不良独特のイントネーションで喋る茶髪男。
あんまり人生で関わりを持ちたくない人種だが仕方あるまい。
さて、この場をどう切り抜けたものか。
自分でも驚くほど冷静な頭で考えをめぐらせていると、おもむろに長門が口を開いた。
「なぜあなたがここに」
それを聞くか、長門よ。
「お前が心配だからに決まってるだろうが!」
つい声を荒げてしまったが、それは俺の本心がそのまま表れたことに他ならない。
しかし長門は、俺と対をなすような淡々とした声で言う。
「わたしはあなたに『信じて』と言ったのに」
「何言ってやがる!そんな男と一緒にいて、よくそんなことが言えるな。俺がどれだけ
不安だったと思う!?」
「…………」
俺が大マジで長門に言葉をぶつけているというのに、ゲラゲラと下品に笑って茶髪男が
俺たちの会話に水を差す。
「オメーは遊ばれてたんだよ。なにしろ、俺とこいつは──」
「長門はそんな奴じゃない!」
そうさ。
俺の知ってる長門は、そんないい加減な奴じゃないんだ。
無口で、料理がちょっと苦手で、人付き合いもあまり得意なほうじゃないが、一途で、純粋で、
誰よりも他人を一番に想える優しい奴なんだ。
どんなときでも長門は、俺を──俺たちを守ってくれた。
そんな長門をバカにするような奴は、俺が許さない。
「……お前、ウゼーよ。なあ、こいつやっちゃっていいか?」
横に無言で佇む長門を見やる茶髪男は、
「…………」
無言を肯定と受け取ったのか、茶髪男は薄笑いを浮かべながらゆらゆらと俺に近づいてくる。
「悪く思うなよ」
俺も不恰好ながらも拳を握り締めて構える。
腕っ節が立つほうじゃないが、今はそんなこと言っていられるか。
勝った負けたという話じゃない。
ここで逃げたら男が廃るってもんだ。
「うおおおおおおおおおおおおお!」
がむしゃらに拳を振りぬいた。
気がつけば、俺は茶髪男に制されていた。
別にギッチリと間接を極められたりしたわけじゃない。
ただ、本当に制されていただけ。
痛みもないし、苦しいこともない。
ふわりと、俺に違和感を与えることなく俺を制していたんだ。
「え?」
思いも寄らぬ茶髪男の行動に俺の頭がついていけないでいると、
「すいません!実は、有希さんに頼まれて一芝居させてもらいました!」
俺を放し、腰をきっちり九十度曲げて頭を下げた。
「えーっと……あなたは?」
俺の疑問に、さっきとは別人のようにハキハキと答える茶髪男。
「俺、有希さんの弟子っス。兄さんのことは、有希さんからよく聞いてます!
「……はぁ?」
何を言ってるんだこの人は?
兄さん?
明らかに俺のほうが年下だぞ?
「弟子などとった記憶は無い」
いつまにやら脇にあるシューティングゲームに興じていた長門がモニターから目を
動かさずに言い捨てる。
「そんなつれないこと言わないでくださいよ~」
男はヘラヘラと薄笑いを浮かべながら長門に擦り寄るが、
「それ以上近づくことは認めないと警告済み。さっきのは例外」
「やだなあ、わかってますよ。有希さんの横に立てるのは兄さんだけ。っスよね」
慌てて直立不動の体勢をとる茶髪男の言葉に長門がこくりと頷く。
「わかっているならいい」
「くぅ~っ!有希さん、相変わらず超クールっスね!ねえ、兄さん」
「え?あ、はい」
もう何がなんだか。
とても二人の会話についていけない。
「兄さんは、どうやって有希さんを口説いたんスか?教えてくださいよ~」
やはり薄笑いを浮かべながらも、今までとは違い、その薄ら笑いの中にも誠実さが
にじみ出ている。
信用してもいいのだろうか。
俺が返事に困っていると、助けてくれるのはいつもこいつだ。
「無粋なことを聞くものではない」
そう言う長門は、今度はモニターから目を離し、男のほうをしっかりと見据えていた。
死んでしまうぞ、長門。
「このステージのパターンは記憶している。前半部は画面を見なくても攻略可能」
「そうなのか……」
すごすぎるだろ、それ。
「それで……弟子ってどういうことだ?」
「ハイッ!一ヶ月前くらいっスかね、ここら辺のゲーセンに現れるっていう伝説のゲーマーの
噂を聞いて、俺も会ってみたくなって」
長門に聞いたつもりだったんだが、茶髪男がハキハキと答える。
「はぁ……」
まあ、答えが聞けるなら誰でもいいんだが。
しかし、伝説ね。
ついに生ける伝説と化したか、長門よ。
「それで?」
続きを促す。
「正直言って、有希さんのこと舐めてたっス。俺も格ゲーには自信あったんスけど、
乱入したら、そりゃあもうボッコボコにされちゃって。それ以来、憧れの有希さんに勝手に
くっついてるだけっス!だから、兄さんが心配することは無いっス!」
いつも完璧に叩きのめされるだけなんですけどね、と付け加えて自分で笑うが、
そう言い切る茶髪男はやけに満足げな顔をしている。
それほどのカリスマを長門に感じたということか。
「そうだったのか……」
「俺は純粋に憧れっスけど、下心で有希さんに声をかける野郎は結構いたんスよ。ほら、
有希さんゲームの腕も最高なうえに、超イケてるじゃないですか。で、いつも有希さんは
言うんス。『わたしに勝ったら』って」
「おいおい……」
お前、冗談でもそんなこと言うなよ。
「…………」
返事は無い。
モニターに集中してるようだ。
俺の心配をよそに、茶髪男は完全に長門を信頼しきった顔で言う。
「大丈夫っスよ。有希さんは無敵っスから。中には強引に誘おうとする奴もいたんスけど、
でも有希さん、そういう奴らはブン投げちまうんスよ」
「ブン投げる?」
「そう、ブン投げるんス」
大雑把かつ大げさに、茶髪男がジェスチャーを交えながら力説する。
「こう、相手の野郎の腕を掴んだと思ったら、そいつはもう地面に叩きつけられてるんス。
まるで魔法みたいに。だから今じゃ、有希さんを無理に誘おうとする野郎はいないんスよ。
有希さん、柔道とか合気道の達人って噂ですけど実際どうなんスか?」
「いや、まあ……それに似たようなもん……かな?」
そんな武道レベルなんてもんじゃないんだが、大は小を兼ねるとも言うし、そういうことに
しておこう。
わざわざ説明なんてしてられないしな。
おもむろに、ゲームを当然のようにクリアした長門が立ち上がり、俺を直視して口を開く。
「心配した?」
そんなの言うまでもないだろうよ。
「当たり前だ」
「……そう」
その直後に茶髪男が信じられないことを口にした。
「有希さんがそんな嬉しそうな顔するの初めて見たっスよ」
「え?」
驚きのあまり、長門を凝視してしまった。
嬉しそう?
長門が?
「有希さんの唯一の欠点じゃないっスかね。笑えば絶対かわいいのに、ニコリとも
しないんスもん。それでも、やっぱり兄さんにだけは笑顔を見せるんスね」
「余計なお世話」
むぅ。
なんだかんだで、長門がここまで言葉のキャッチボールをする相手っていうのもそう
いるもんじゃないよな。
しかも、俺よりも短い付き合いなのにはっきりと長門の心情を読み取るなんて。
正直悔しいと思ってしまった。
俺にはいつもの無表情にしか見えなかったんだから。
みっともないことかもしれないが、俺はこの茶髪男に軽く嫉妬してしまったようだ。
「兄さん兄さん」
「え?」
器の小さいことを考えているところに、小声で長門に聞こえないように茶髪男が言ってくる。
「有希さんね、兄さんが飛び込んで来たとき、めっちゃ喜んでたっスよ。兄さん、
愛されてるんスね。これからも大事にしてあげてください」
「あ、はい……もちろん」
これからも有希さんをよろしくっス、と深く一礼して、茶髪男は店をあとにした。
その姿が完全に見えなくなったところで、長門が呟いた。
「わたしも帰る」
「俺はついて行ったらダメなのか?」
ふるふると首を振って、手を差し伸べてくる長門。
「一緒に」
俺がその手を取らない理由なんてあるわけないだろ?
その帰り道。
俺たちは堂々と手をつないで歩いている。
この手を離したら、長門が俺の手の届かないところに行ってしまうんじゃないかなんて
思ったりしてしまうが、俺が長門のことを想い続ける限りこいつは応えてくれる。
もちろん、逆もまた然りさ。
「なあ、長門」
「何」
「どうしてまた、こんなことを思いついたんだ?」
彼氏として聞いておきたいと思うのは当然だよな。
「……おあいこ」
「おあいこ?」
俺の疑問文には小さく頷くだけ。
どんな答えが返ってくるかと思いきや、これは予想外だった。
しかし、おあいこ、ね。
おあいこというからには、俺にもそれなりの落ち度があるってことだが、はて、俺は一体
何をやらかしたっけ。
「ジュース」
「……お前、あれをまだ引きずってたのか」
こないだの一件か。
「ここしばらくのわたしの行動は、全てわたしのシナリオに沿ったもの」
「そうなのか?」
こくりと頷き、まるで感情が含まれていないような声で平坦と話す。
「少しばかりあなたに意地悪をしようと思った。全てそのための伏線」
「ナンパ男をブン投げたってのもか?」
「それは誤算」
あ、それは違うのか。
「彼を待つ間の空いた時間を潰していると、なぜかその手の輩が頻出する。大概はゲームで
完膚なきまでに叩きのめせばプライドが折られ消えていくが、極少数の例外にのみ適用した」
どうでもいいが、あんまりやりすぎるなよな。
相手にケガさせるのはちょっといただけないぞ。
「わたしはあなたのものだから」
だからそれ以外の男は排除する、なんてことをサラリと言ってのけるところが怖いところでも
あるが嬉しくもある。
「男と会っていたというのは彼のこと。少々うっとおしいが、あなたとのことについて
相談相手になってくれていた」
「そうだったのか」
結果論になるが、悪い人ではなかったしな。
あの身のこなしと態度からするに、完全に体育会育ちの人だろう。
不良演技には恐れ入るがな。
「はぁ……」
結局俺はこの完璧宇宙人の手のひらで踊らされていただけであって、一連の騒動は
長門なりのちっちゃな復讐ってとこか。
しかし、仕組まれたものとはいえ俺の本心も長門に理解してもらえたかな。
あとはどうでもいいような話をしながら歩いた。
久しぶりだからというのもあるが、やはり俺は長門のことが好きなんだなということを心から
再認識したよ。
そして、俺の家と長門の家への分岐点。
名残惜しくもその手を離し、明日の再会を約束する。
「じゃあ……な」
「また」
「…………」
「…………」
「…………」
「帰らないの?」
一向に歩き出さない俺に、長門が声をかけてきた。
そりゃ、おかしくも思うよな。
この日という条件とこの空気、この機会逃せば次は無いような気がする。
「あのさ、長門」
「?」
長門は首をかしげて俺の言葉を待っている。
「え……っと、だな」
さっきから思っていたんだが、これを切り出すのは、結構恥ずかしいものがあるな。
「その、俺も……有希……って、呼んでいいか?」
「…………」
長門もこの質問は予想していなかったのだろう。
俺の頭の中を覗き見るかのようにまじまじと視線を交差させる。
さすがにこれはマズかったか。
「いや、お前がイヤなら、別に今のままでも──」
だが、俺は全てを口にすることはできなかったわけで。
「好ましいこと」
「……そっか」
「そう」
どこか恥ずかしそうにうつむいて端的に答えが返ってきたが俺にはそれで十分だ。
「明日、また学校でな。……有希」
「また明日……」
長門の小さな唇が言葉を紡ぐが、最後の唇の動き方でわかった。
別に読唇術の心得があるわけじゃないが、あれなら俺でもわかる。
最後の最後に、小さく呟いたたったの三文字。
俺に聞こえなくてもいいくらいの気持ちだったのかね。
どうせならはっきりと聞きたいと思うが、それはまた次の楽しみにとっておくか。
長門が俺の名を呼んでくれたのも初めてだしな。
おしまい
長倉劇場という名のあとがき
ジュースの一件は「やきもち」から。
急いで更新してるので誤字脱字あると思いますのであとで直します。
題名改めなおし完了。
今日もレスからですね。
>ハルヒかわいい、最高!パソコンの前で悶えてました~
悶え死んでも責任は取れませんヨ(゚∀。)
>甘ーい!!なのに不思議と自然に読めてしまいました。
そう言ってもらえれば幸いです。僕も書きながらニヤニヤしていました。変態ですね、僕は。
たくさんのレスをいつもいつもありがとうございます。励みになるというか
もう命の糧です。今回の拍手からするに、みなさんハルヒが好きなんですね~。
僕ももちろん嫌いじゃありませんし、嫌いだったら書きませんもの。
みくるちゃん?古泉?ナンノコトデスカ?
そして、もう一ついただいたレスなんですが
>今度は、キョンが長門にやきもちをやくターンだと思います。
目からうろこでしたね。よくよく考えればパターン化されていたというか、僕の中で
二人の関係が型にハマりすぎていたことに気づかされました。
付き合っていれば、キョンが長門さんにやきもちやくことも自然ですよね。
まして長門さんですし。長門さんかわいいよ長門さん。
というわけで以下本文です。どうぞ。
長門有希の復讐
「今日は予定があるから無理」
「またかよ……」
SOS団の活動が無い日は長門と二人で帰るのが自然になっていたのだが、ここ最近の
長門はどうもおかしい。
予定がある、忙しいetc……
何かしらの理由をつけて断られている俺。
避けられているのかと考えたこともなくはないが、普段からそういうそぶりを見せるでもなく、
休日には普通にデートもする。
そこから考えると別に嫌われてるわけではないよな、というかそうであってほしい。
となると本当に理由があってのことなのか。
「心配はいらない」
俺の心を読んだかのようなタイミングで長門が言う。
でもな、ちゃんと理由も説明してくれないと納得できないってのもわかってくれ。
「最近のお前、そればっかじゃないか」
少しだけ口調に苛立ちを含めて言ったつもりだが、
「偶然」
長門は、ただそれだけしか答えをよこさなかったわけで。
「偶然って……お前、俺の気持ちも──」
キーンコーンカーンコーン……
チャイムが鳴り響き、次の授業の開始を予告する。
それを聞くなり長門は踵を返し、教室へと歩き出した。
「おい!」
呼びかける俺の声に、
「信じて」
ただ一言だけを残して。
俺だって長門のことを疑ったりなんかしたくないさ。
ただ、よからぬ噂を聞いちまったんだよ
お前が男と会っているって噂をな。
外面だけ見れば谷口的美少女ランクAマイナー、簡単に言えば普通に美少女だ。
もちろん俺もそう思う。
別に自慢じゃないぞ。
そこんとこ誤解するなよ。
そして俺が今なにをしているかというとだな。
「…………」
すぐに身を隠せるように道の端っこを歩き、警戒しながら前を行く小さな背中を
追いかけている。
昼休みに長門と別れたあと、悩んだ末の結果がこれだ。
放課後予定があるという長門のあとを尾行なんてしているわけで、ほんと何やってるん
だろうね、俺は。
ときたま長門は立ち止まり、キョロキョロ周囲を見回したりしているが、これは長門も何かを
気にしていることの表れじゃないだろうか。
これは気になる。
ただ、長門が立ち止まるたびに電柱の陰に隠れたりするせいで周りの人たちの視線が
少々痛いがこの際構っていられない。
しかし、以外なことに長門には気付かれていないようだった。
俺って探偵の才能でもあるのかね。
将来の選択肢候補に加えておこう
恥ずかしさを押し殺しながら、長門を見失わないようにこっそりと追いかけること数十分。
「お?」
長門は、街でも大手であるゲーセンへと入っていった。
「予定があるって、ゲーセンかよ……」
どういうことだ。
足が自然と入り口へと向かったが、なんとか踏みとどまる。
さすがにこの格好だと目立ちすぎるし、中までついていってしまってはすぐバレてしまうだろう。
「くそっ……」
仕方ない。
ここから様子を眺めるしかないか。
ガラス張りの壁面からさりげない風を装って中の長門の姿を追う。
幸い店の奥深くに進むことはなく、入り口に近い長門お得意のガンシューティングゲームへと
向かったようだ。
「本当に遊びにきただけなのか?でも、それなら俺が一緒に来たっていいだろうに……」
長門は筐体の前に立って鞄を置き、硬貨をコイン投入口に飲み込ませて銃を構える。
おかしいところは、今のところ特に無い。
しかし、やはりこのまま何も無いということは逆におかしい。
すなわちそれは、単純に俺と一緒にゲーセンに行きたくないと解釈できてしまうわけで、
男でも何でも、何かしら理由があってのことでないと俺がみじめでしかない。。
落ち着かない心境で長門の様子を観察していると、
「ん?」
見た目二十歳前後くらいの、今時の若者って感じの茶髪男が長門に声をかけた。
何を話しているかはわからないが、どうやら二人は顔見知りみたいだが、件の男は明らかに
不良街道驀進中なご様子だ。
聞いた噂が頭をよぎる。
「おいおい……」
予定ってのは、まさかこの男と会うことだってのか?
少しずつ俺の体が熱を持っていくのを感じた。
体は感情に正直だってのに、頭のほうはやけに冷静なもんなんだな。
もう少しだけ、もう少しだけ様子を見ようと思っていたんだが、茶髪男が親しげに長門の肩に
手を置いたのを視界に捉えた瞬間、
「長門から手を離せ!」
気付けば俺は茶髪男に指を突きつけていた。
訝しげな表情で俺を睨みながら、
「あ?なんだ、テメー?」
不良独特のイントネーションで喋る茶髪男。
あんまり人生で関わりを持ちたくない人種だが仕方あるまい。
さて、この場をどう切り抜けたものか。
自分でも驚くほど冷静な頭で考えをめぐらせていると、おもむろに長門が口を開いた。
「なぜあなたがここに」
それを聞くか、長門よ。
「お前が心配だからに決まってるだろうが!」
つい声を荒げてしまったが、それは俺の本心がそのまま表れたことに他ならない。
しかし長門は、俺と対をなすような淡々とした声で言う。
「わたしはあなたに『信じて』と言ったのに」
「何言ってやがる!そんな男と一緒にいて、よくそんなことが言えるな。俺がどれだけ
不安だったと思う!?」
「…………」
俺が大マジで長門に言葉をぶつけているというのに、ゲラゲラと下品に笑って茶髪男が
俺たちの会話に水を差す。
「オメーは遊ばれてたんだよ。なにしろ、俺とこいつは──」
「長門はそんな奴じゃない!」
そうさ。
俺の知ってる長門は、そんないい加減な奴じゃないんだ。
無口で、料理がちょっと苦手で、人付き合いもあまり得意なほうじゃないが、一途で、純粋で、
誰よりも他人を一番に想える優しい奴なんだ。
どんなときでも長門は、俺を──俺たちを守ってくれた。
そんな長門をバカにするような奴は、俺が許さない。
「……お前、ウゼーよ。なあ、こいつやっちゃっていいか?」
横に無言で佇む長門を見やる茶髪男は、
「…………」
無言を肯定と受け取ったのか、茶髪男は薄笑いを浮かべながらゆらゆらと俺に近づいてくる。
「悪く思うなよ」
俺も不恰好ながらも拳を握り締めて構える。
腕っ節が立つほうじゃないが、今はそんなこと言っていられるか。
勝った負けたという話じゃない。
ここで逃げたら男が廃るってもんだ。
「うおおおおおおおおおおおおお!」
がむしゃらに拳を振りぬいた。
気がつけば、俺は茶髪男に制されていた。
別にギッチリと間接を極められたりしたわけじゃない。
ただ、本当に制されていただけ。
痛みもないし、苦しいこともない。
ふわりと、俺に違和感を与えることなく俺を制していたんだ。
「え?」
思いも寄らぬ茶髪男の行動に俺の頭がついていけないでいると、
「すいません!実は、有希さんに頼まれて一芝居させてもらいました!」
俺を放し、腰をきっちり九十度曲げて頭を下げた。
「えーっと……あなたは?」
俺の疑問に、さっきとは別人のようにハキハキと答える茶髪男。
「俺、有希さんの弟子っス。兄さんのことは、有希さんからよく聞いてます!
「……はぁ?」
何を言ってるんだこの人は?
兄さん?
明らかに俺のほうが年下だぞ?
「弟子などとった記憶は無い」
いつまにやら脇にあるシューティングゲームに興じていた長門がモニターから目を
動かさずに言い捨てる。
「そんなつれないこと言わないでくださいよ~」
男はヘラヘラと薄笑いを浮かべながら長門に擦り寄るが、
「それ以上近づくことは認めないと警告済み。さっきのは例外」
「やだなあ、わかってますよ。有希さんの横に立てるのは兄さんだけ。っスよね」
慌てて直立不動の体勢をとる茶髪男の言葉に長門がこくりと頷く。
「わかっているならいい」
「くぅ~っ!有希さん、相変わらず超クールっスね!ねえ、兄さん」
「え?あ、はい」
もう何がなんだか。
とても二人の会話についていけない。
「兄さんは、どうやって有希さんを口説いたんスか?教えてくださいよ~」
やはり薄笑いを浮かべながらも、今までとは違い、その薄ら笑いの中にも誠実さが
にじみ出ている。
信用してもいいのだろうか。
俺が返事に困っていると、助けてくれるのはいつもこいつだ。
「無粋なことを聞くものではない」
そう言う長門は、今度はモニターから目を離し、男のほうをしっかりと見据えていた。
死んでしまうぞ、長門。
「このステージのパターンは記憶している。前半部は画面を見なくても攻略可能」
「そうなのか……」
すごすぎるだろ、それ。
「それで……弟子ってどういうことだ?」
「ハイッ!一ヶ月前くらいっスかね、ここら辺のゲーセンに現れるっていう伝説のゲーマーの
噂を聞いて、俺も会ってみたくなって」
長門に聞いたつもりだったんだが、茶髪男がハキハキと答える。
「はぁ……」
まあ、答えが聞けるなら誰でもいいんだが。
しかし、伝説ね。
ついに生ける伝説と化したか、長門よ。
「それで?」
続きを促す。
「正直言って、有希さんのこと舐めてたっス。俺も格ゲーには自信あったんスけど、
乱入したら、そりゃあもうボッコボコにされちゃって。それ以来、憧れの有希さんに勝手に
くっついてるだけっス!だから、兄さんが心配することは無いっス!」
いつも完璧に叩きのめされるだけなんですけどね、と付け加えて自分で笑うが、
そう言い切る茶髪男はやけに満足げな顔をしている。
それほどのカリスマを長門に感じたということか。
「そうだったのか……」
「俺は純粋に憧れっスけど、下心で有希さんに声をかける野郎は結構いたんスよ。ほら、
有希さんゲームの腕も最高なうえに、超イケてるじゃないですか。で、いつも有希さんは
言うんス。『わたしに勝ったら』って」
「おいおい……」
お前、冗談でもそんなこと言うなよ。
「…………」
返事は無い。
モニターに集中してるようだ。
俺の心配をよそに、茶髪男は完全に長門を信頼しきった顔で言う。
「大丈夫っスよ。有希さんは無敵っスから。中には強引に誘おうとする奴もいたんスけど、
でも有希さん、そういう奴らはブン投げちまうんスよ」
「ブン投げる?」
「そう、ブン投げるんス」
大雑把かつ大げさに、茶髪男がジェスチャーを交えながら力説する。
「こう、相手の野郎の腕を掴んだと思ったら、そいつはもう地面に叩きつけられてるんス。
まるで魔法みたいに。だから今じゃ、有希さんを無理に誘おうとする野郎はいないんスよ。
有希さん、柔道とか合気道の達人って噂ですけど実際どうなんスか?」
「いや、まあ……それに似たようなもん……かな?」
そんな武道レベルなんてもんじゃないんだが、大は小を兼ねるとも言うし、そういうことに
しておこう。
わざわざ説明なんてしてられないしな。
おもむろに、ゲームを当然のようにクリアした長門が立ち上がり、俺を直視して口を開く。
「心配した?」
そんなの言うまでもないだろうよ。
「当たり前だ」
「……そう」
その直後に茶髪男が信じられないことを口にした。
「有希さんがそんな嬉しそうな顔するの初めて見たっスよ」
「え?」
驚きのあまり、長門を凝視してしまった。
嬉しそう?
長門が?
「有希さんの唯一の欠点じゃないっスかね。笑えば絶対かわいいのに、ニコリとも
しないんスもん。それでも、やっぱり兄さんにだけは笑顔を見せるんスね」
「余計なお世話」
むぅ。
なんだかんだで、長門がここまで言葉のキャッチボールをする相手っていうのもそう
いるもんじゃないよな。
しかも、俺よりも短い付き合いなのにはっきりと長門の心情を読み取るなんて。
正直悔しいと思ってしまった。
俺にはいつもの無表情にしか見えなかったんだから。
みっともないことかもしれないが、俺はこの茶髪男に軽く嫉妬してしまったようだ。
「兄さん兄さん」
「え?」
器の小さいことを考えているところに、小声で長門に聞こえないように茶髪男が言ってくる。
「有希さんね、兄さんが飛び込んで来たとき、めっちゃ喜んでたっスよ。兄さん、
愛されてるんスね。これからも大事にしてあげてください」
「あ、はい……もちろん」
これからも有希さんをよろしくっス、と深く一礼して、茶髪男は店をあとにした。
その姿が完全に見えなくなったところで、長門が呟いた。
「わたしも帰る」
「俺はついて行ったらダメなのか?」
ふるふると首を振って、手を差し伸べてくる長門。
「一緒に」
俺がその手を取らない理由なんてあるわけないだろ?
その帰り道。
俺たちは堂々と手をつないで歩いている。
この手を離したら、長門が俺の手の届かないところに行ってしまうんじゃないかなんて
思ったりしてしまうが、俺が長門のことを想い続ける限りこいつは応えてくれる。
もちろん、逆もまた然りさ。
「なあ、長門」
「何」
「どうしてまた、こんなことを思いついたんだ?」
彼氏として聞いておきたいと思うのは当然だよな。
「……おあいこ」
「おあいこ?」
俺の疑問文には小さく頷くだけ。
どんな答えが返ってくるかと思いきや、これは予想外だった。
しかし、おあいこ、ね。
おあいこというからには、俺にもそれなりの落ち度があるってことだが、はて、俺は一体
何をやらかしたっけ。
「ジュース」
「……お前、あれをまだ引きずってたのか」
こないだの一件か。
「ここしばらくのわたしの行動は、全てわたしのシナリオに沿ったもの」
「そうなのか?」
こくりと頷き、まるで感情が含まれていないような声で平坦と話す。
「少しばかりあなたに意地悪をしようと思った。全てそのための伏線」
「ナンパ男をブン投げたってのもか?」
「それは誤算」
あ、それは違うのか。
「彼を待つ間の空いた時間を潰していると、なぜかその手の輩が頻出する。大概はゲームで
完膚なきまでに叩きのめせばプライドが折られ消えていくが、極少数の例外にのみ適用した」
どうでもいいが、あんまりやりすぎるなよな。
相手にケガさせるのはちょっといただけないぞ。
「わたしはあなたのものだから」
だからそれ以外の男は排除する、なんてことをサラリと言ってのけるところが怖いところでも
あるが嬉しくもある。
「男と会っていたというのは彼のこと。少々うっとおしいが、あなたとのことについて
相談相手になってくれていた」
「そうだったのか」
結果論になるが、悪い人ではなかったしな。
あの身のこなしと態度からするに、完全に体育会育ちの人だろう。
不良演技には恐れ入るがな。
「はぁ……」
結局俺はこの完璧宇宙人の手のひらで踊らされていただけであって、一連の騒動は
長門なりのちっちゃな復讐ってとこか。
しかし、仕組まれたものとはいえ俺の本心も長門に理解してもらえたかな。
あとはどうでもいいような話をしながら歩いた。
久しぶりだからというのもあるが、やはり俺は長門のことが好きなんだなということを心から
再認識したよ。
そして、俺の家と長門の家への分岐点。
名残惜しくもその手を離し、明日の再会を約束する。
「じゃあ……な」
「また」
「…………」
「…………」
「…………」
「帰らないの?」
一向に歩き出さない俺に、長門が声をかけてきた。
そりゃ、おかしくも思うよな。
この日という条件とこの空気、この機会逃せば次は無いような気がする。
「あのさ、長門」
「?」
長門は首をかしげて俺の言葉を待っている。
「え……っと、だな」
さっきから思っていたんだが、これを切り出すのは、結構恥ずかしいものがあるな。
「その、俺も……有希……って、呼んでいいか?」
「…………」
長門もこの質問は予想していなかったのだろう。
俺の頭の中を覗き見るかのようにまじまじと視線を交差させる。
さすがにこれはマズかったか。
「いや、お前がイヤなら、別に今のままでも──」
だが、俺は全てを口にすることはできなかったわけで。
「好ましいこと」
「……そっか」
「そう」
どこか恥ずかしそうにうつむいて端的に答えが返ってきたが俺にはそれで十分だ。
「明日、また学校でな。……有希」
「また明日……」
長門の小さな唇が言葉を紡ぐが、最後の唇の動き方でわかった。
別に読唇術の心得があるわけじゃないが、あれなら俺でもわかる。
最後の最後に、小さく呟いたたったの三文字。
俺に聞こえなくてもいいくらいの気持ちだったのかね。
どうせならはっきりと聞きたいと思うが、それはまた次の楽しみにとっておくか。
長門が俺の名を呼んでくれたのも初めてだしな。
おしまい
長倉劇場という名のあとがき
ジュースの一件は「やきもち」から。
急いで更新してるので誤字脱字あると思いますのであとで直します。
題名改めなおし完了。
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